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ITコーディネータ 針生徹


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□◆ コミュニケーション・ロスを「BABOK」で撲滅
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きちんと伝えたはずなのに、相手に「知らない。聞いていない」と怒られた。事前に確認しておいたのに、「そんなことは認めていない」と逆ギレされた。話が伝わっていたと思ったら、相手の都合の良いように勝手に解釈されていた――。こうしたことは、誰しも一度は経験したことがあるだろう。

利害関係者(ステークホルダー)との意思疎通が図れない「コミュニケーション・ロス」は、担当者のストレスを増大させるだけでなく、会社全体の生産性を著しく低下させてしまう。業務改革やシステム企画・開発などのプロジェクトでのコミュニケーション・ロスは、作業の手戻りを引き起こす。場合によってはシステムトラブルの原因にもなる。当然のことながら、それに費やすITコストも無駄になる。

やっかいなのは、意識していないところでコミュニケーション・ロスが起きてしまうことだ。自ら足を引っ張ろうとしてコミュニケーション・ロスを招く人はいない。IT調査・コンサルティングを手掛けるアイ・ティ・アールの広川智理シニア・アナリストは、「みんなが一致団結していると思い込んでいるときほど、想定外のコミュニケーション・ロスが起きる」と指摘する。

もともと日本では、「以心伝心」でプロジェクトを進めていた。しかし、時代とともにビジネスパーソンの価値観は多様化し、仕事の進め方もシステマティックになった。同時に共通の価値観や判断基準は無くなった。共通の“ものさし”が存在しなくなった結果、「以心伝心」でものごとを進めることはできなくなりあちこちでコミュニケーション・ロスが起きているのである。

■■ 共通の“ものさし”を持とう

業務改革やシステム企画・開発において、コミュニケーション・ロスを防ぐにはどうすればよいか。その解決策の一つとして注目されているのが「BABOK(ビーエーボック:Business Analysis Body of Knowledge)」だ。BABOKはビジネスアナリシスのために必要な知識を、体系化してまとめたガイドラインのようなものである。システムを企画・開発する際に要求を収集・整理し、優先順位を付けるためのポイントなどが示されている。

実はコミュニケーションを円滑に進める方法は、BABOKには明確に記されていない。だが、「BABOKの背景にある考え方を知ることで、コミュニケーション・ロスはぐんと減る」と広川氏は指摘する。プロジェクトのステークホルダーが、BABOKに記されている意思決定プロセスや判断基準を知ることで、共通の“ものさし”を持てるようになるからだ。

例えば、「確認したら資料にサインをする。サインをしたことは了承したことを意味する」「口頭だけでは“伝達した”ことにはしない」「異議がある場合は1週間以内に申し立てる」といったルールを作り、利害関係者で共有するようにすれば、「言った、言わない、聞いていない」といったコミュニケーション・ロスを減らせる。

システムの企画・開発や業務改革はもちろん、ビジネスの世界では必ずルールがある。その重要性をプロジェクトメンバーやステークホルダーが理解できればコミュニケーション・ロスはぐんと減り、業務改革やシステム企画・開発は円滑に進むようになる。「BABOKを学ぶこと、学ばせることは、そのきっかけになる」(広川氏)。

コミュニケーション・ロスが減れば、仕事の手戻りは無くなる。生産性もぐんと上がる。ビジネス上の対人関係は良くなり、ストレスが減るかもしれない。この春から社会人になる方、この春からチームリーダーになる方、この春から管理職として部下をまとめる方、そして、業務改革やシステム企画・開発プロジェクトを円滑に進めたいと思っている方は、一度、「BABOK」の世界に足を踏み入れてみてはいかがだろうか。

                                          (目次 康男=日経コンピュータ)

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