Harry

ITコーディネータ 針生徹


Sep 28
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□◆【あなたにも実践できる「BABOK」】
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BABOK(ビーエーボック:Business Analysis Body of Knowledge)の注目度が高まっている。硬く言えば、BABOKとは「経営層や利用部門が持つシステム開発の目的や要求を明らかにして、解決策を決めるための知識体系」となるが、もっと肩の力を抜いて「一生懸命作ったのに使われないシステムが出来上がるようなことをなくすためのガイドライン」と考えればよい。

 ここでいう使われないシステムとは「操作性が悪くて使いにくい」ということではない。経営層や利用部門の意向を反映していないシステムである。作ったはいいが、「在庫を圧縮したい」「リードタイムを早めたい」「顧客のライフサイクルに合った商品を薦めたい」といった要望を満たせていないシステムのことだ。

 BABOKは決してそれ一つでシステム開発の課題をすべて解決できる“銀の弾丸”ではない。ただ、現在、多くの開発現場で「使われないシステム」を作ってしまう原因となっている、要件定義工程、ならびに要件定義に先立ってシステムの方向性や構想を決める「超上流」工程をスムーズに進められる力がある。

 なぜBABOKを参考にするとスムーズに進められるのか。理由は二つある。

 一つは、企業全体の目的や目標を示す「ビジネス要求」と、利用部門など特定のステークホルダーによる「ステークホルダー要求」といった具合に「要求」を整理していること。もう一つが、超上流や要件定義で、誰が何をどんな目的で進めるべきか、その作業のインプットは何でアウトプットは何かといったことを体系立てて整理していることだ。

 BABOKを策定しているのはカナダのIIBA(International Institute of Business Analysis)という非営利団体である。社長以下、メンバーにはユーザー企業やITベンダーで超上流や要件定義を担当する「ビジネスアナリスト」の経験者が名を連ねている。

 BABOKはこうしたメンバーが自分たちの経験やノウハウを出し合って策定したものだ。上述のように要求をレベル分けして定義することに加え、超上流や要件定義に必要なタスク(作業項目)やテクニック(技術的手法)、インプットとアウトプットを「知識エリア」と呼ぶ七つの領域に分けて記述している。

 IIBAでBABOKの策定に携わってきたケビン・ブレナン副社長は、自身の経験も踏まえて、「BABOKが出来るまではビジネスアナリストは何を実施すべきなのかという共通理解がなかったどころか、何をどう学べばビジネスアナリストになれるのかも分からなかった」と話す。

 このことからBABOKの使い方には二通りあることが分かる。実際にシステム開発で使う方法と、人材育成に使う方法だ。実際、日本でのBABOK活用を取材したところ、ユーザー企業とITベンダーはやはりこの二通りで活用を進めていた。

 取材で多く聞こえたのが「BABOKの項目は充実しているものの、自分たちが実践してきたことも多分に含まれていた」という声だ。それはもっともと言える。BABOKは欧米の開発現場を前提に策定されたが、決して日本の開発現場で実践されている項目とはかけ離れてはいないということだ。

 そう思えば、BABOKの活用はぐっと身近になる。自分たちが実践してきた項目がどこにあるかを探しながら、何が足らなかったかを足していけばいい。実際にBABOKを利用している企業の情報システム部門のリーダーは「自分たちが実践してきた作業を照らし合わせて、足らない部分が分かった。それが分かっただけでも利用する価値があった」と評価している。

 注意が必要なのが、BABOKは知識体系に過ぎず、「この通りに進めれば“使われるシステム”が出来ます」という手順を規定したものではない、ということだ。この点に気をつければ、ある程度の開発経験があり「使われないシステムはもうたくさん」という問題意識を持った開発者の意識を改革するうえでBABOKは即効性があり、かつ超上流や要件定義で汎用的に使えるツールになる。

                       (井上英明=日経コンピュータ)